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■ナカジとサユリの話は、書きたい順に書いてるせいで時間軸がおかしくなりつつあります。
またあとで続き物と単発と分けなきゃなあ、とか思ってます。

で、今回はまだナカジとサユリはくっついてません。
ちうかくっつくのか本当に。





空の色は不穏だ。
明るいのに曇っている。
雲に覆われた空の向こうに、光が内包されているのが分かる。
 
ああ、嫌な予感。
 
神様神様、お願いします。
雷だけは勘弁してください。
 
 
 
『遠雷』
 
 
 
告白します。
高校二年生にもなって、私は雷が苦手です。
音も光もダメです。
急に光るのは反則だと思います。
かといって、ゴロゴロと低い音がずっとなっているのも耐えられません。
もう雷が始まると、体を縮めて蹲るしかありません。
 
 
だから。
 
 
放課後、激しい雷雨が始まったとき、私はもうこの世の終わりが来たような顔をして
外を見るしかなかった訳で。
 
 
 
雨のなか、部活に励む音がする。
吹奏楽部の練習の音。
外で練習できないから、廊下を走る陸上部の掛け声。
演劇部の発声練習。
そんな色々な音と、雨の音と、雷の音。
私は教室の自分の席から動けない。
雷にはり付けられて、どうしようもない。
人気がない教室が、余計に怖さを増しているのはわかるけど、その位で動けるなら、
とうの昔に帰ってる。
 
と、教室に誰かやってきた。
中嶋君だ。
 
 
中嶋君は私にたいして興味を示さず、自分の席へ向かう。そうか、今日日直してたっ
け。日誌、置きに行って来たんだ。
そのまま無言で中嶋君が教室から出ていくところで、雷。
「ひっ」
息を飲む。
今の音、凄く大きかった。
窓ガラスが、ビリビリしてる。
「?」
中嶋君は立ち止まって、不思議そうに私を見た。
 
また雷。
 
私は机に突っ伏すようにして、頭を抱える。
 
「……」
「……」
しばらく、お互い無言。
 
「……もしかして」
中嶋君の声。
「雷、苦手か?」
隠す余裕もなく、こくこく頷く。
「あー……」
中嶋君が呆れたような、納得したような声をあげる。
 
また、雷。
 
「……っ!」
息を飲む。
今日の雷、長い。
中嶋君はいつの間にか、私の前までやってきていた。
「まだデモだから粗いし下手だし一曲だけど」
ぼそりと呟く声と共に、ヘッドホンがかぶされる。
かなりの音量の、ギターの音。
普段、あんまり聴かない、ロック。
        
中嶋君の口が動く。
何を言ってるのかわからない。
「何?」
中嶋君は納得したような顔をして、机に指で
『目、つぶれば光はわからない』
と書いた。
それから、持っていた文庫本に目を向ける。
私はしばらく目を閉じることにして、音楽に集中する。
 
音量が大きくて、ちょっと耳が痛い。
ギター。
ドラム。
ベース。
テンポは早め。
ギラギラ光る、音。
歌。
少しざらっとしたような、でも伸びのある声。
文語体みたいな、少し固い日本語の歌詞。
 
あ。
カッコいい。
 
中嶋君の、声だ。
 
 
私は目を開けて、中嶋君を見る。
文庫本に集中して、私の視線に気付かない。
メガネの向こうの目が、忙しなく上下に動く。
 
ギターの音。
聞いたことなかった 、中嶋君の歌声。
少し、攻撃的。
中嶋君の、目。
私を見ない、集中した眼差し。
 
 
私の世界を、
今までなかった色に染めて
 
 
ふと、外を見る。
思わず、本に集中している中嶋君の肩を叩く。
ヘッドホンを外して
指を差す。
「ねえ!」
「あぁ」
中嶋君が目を細める。
 
 
光に満ちた空に、七色の橋。
「虹!」
「あぁ」
「好き」
「え」
「虹、綺麗で大好き」
「……あぁ」
中嶋君はマフラーを少し引き上げる。
「ありがとう、いつも変なトコばっかり見られてるね、私」
「気のせいだろ」
「曲、カッコよかった」
「……ありがとう」
「ちゃんとできたら、聴かせてね」
中嶋君はそれに眉を寄せて。
 
 
「気が向いたらな」
「楽しみにしてるね」
 

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