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■姉は、弟への嫌がらせに心血を注いでいます。
弟は、そんな姉が、恐ろしくてたまりません。

そんな姉弟の、ある日の一コマ。






彼にとって、一番の恐怖は「姉」である。
世の中、それ以外に怖い物なんて、無い。



『嵐のような女』



彼女は鼻歌交じりに、廊下を歩いていた。
いつもはこんなところは通らない。なぜなら、ここは一学年下が使っている階。
基本的には用事は無い。
つまり、彼女は現在用事があってこんなところを歩いている。
一学年下の生徒たちは、不思議そうに彼女を見る。
学年カラーが違うからすぐに分かるのだろう、と彼女は考える。別に見られて困ることはしていない。
そんなことより、彼女はこれから起こることに笑みが収まらない。



どんな顔をするかしら。



目的地の教室では、丁度教室に入ろうとしている女の子を見つけた。
彼女は、その女の子を呼び止める。髪の毛を二つに分けてくくった、少し小柄の、赤いジャージの女の子。なかなかかわいらしい。
「ごめん、今教室にナナちゃんは居る?」
声をかけられた女の子――サユリは首をかしげた。
クラスメイトに、ナナなんて名前のついた女子は居ない。
「いないと思います」
サユリは首を横に振る。
「え? 困ったな」
彼女はそういうと、半開きになっているドアから教室の中を覗き込んだ。
目当ての相手は、居る。
「居るじゃない。うそつき」
彼女はサユリににっこり笑いながらそういう。
「え?」
うそをついた心算などまったく無いサユリは絶句して、そのまま呆然と立ち尽くす。
その間に、彼女は半開きになっていたドアを足で一気に開けると、教室の中に乗り込んだ。



目当ての相手は、クラスメイトの男子と話をしていて、まだこちらには気づいていない。
それもそうだろう、話し相手は彼女に背を向け、腕を大きく開いてなにやら熱心に話していて、その身体に隠れて自分からも相手が見えないのだ。相手のほうも、彼女に気づきようがないのである。

好都合、と彼女は再び口を吊り上げる。

そして、目当ての相手と話をしているクラスメイトの肩に手をかけ
「邪魔よ」
いいながら、ひょい、とその男子を横にどける。
不意をつかれたせいか、茶色い髪の男子は思いっきり床にしりもちをついた。

「……っ」
タローで死角になっていたところから突然姿を現した彼女に、相手が息を呑んだのが分かった。
「ハロー、ハウロウ? ナナちゃん、元気?」
「……」
唖然として相手はイスに腰掛けたまま彼女を見上げている。
「ナナちゃん、元気?」
「お、おね……」
相手が言い終わらない前に、彼女は微笑んだ。
にっこり、と。
その瞬間、相手は背筋を伸ばした。
「ナナちゃんに、選ばせてあげます」
「な、何を?」
相手の顔は、青ざめてきている。
自分がにっこりと笑うと、彼はとても怖がるのだ。
長年かけて恐ろしさを刷り込んできた甲斐があるというものだ。

「やさしい私は、選ばせてあげます」
「な、にを?」
「今すぐ即刻、お弁当箱を何も言わずに差し出すか、今すぐ即刻、財布を何も言わずに差し出すか」
相手は、弟は、恐る恐るといった感じに、彼女に尋ねる。
「それはつまり、おねいさまは、弁当を家に忘れたってことですか?」
「質問は受け付けません」
言うと、彼女はどん、と机を蹴る。
弟の顔が引きつった。
メガネの奥の目が、恐怖に彩られる。
「じゃ、じゃあ、弁当……」
「却下」
「選ばせてねえじゃん!」
「口答えとは良い度胸ね、ナナちゃん」
弟は何か色々と内心葛藤があったようだったが、財布を差し出した。
黒い、何の変哲も無い財布だ。もっと良いものを持てばよいのに、と思う。
彼女はナチュラルに札入れを覗き
「ナナちゃん、今月何買ったの? 無駄遣いしたでしょ、あんまり入ってないじゃない、諭吉が」
「……何買ってても俺の勝手だろ」
「ま、そうなんだけど、やっぱり、ねえ?」
にっこり。
弟内心後ずさり。
にこにこにこ。
微笑みながらざっくりと札を取り出す。
「やさしい姉は、ナナちゃんに英世を残してあげます」
「あの、おねいさま」
弟が小さく手を上げた。
「何かしら、ナナちゃん」
「昼飯かうだけで、なんでそんな持って?」
「帰りに花ゆめ買わなきゃいけないの」
「それでも3万は取りすぎだろ3万はー!」


「喧しい」


彼女は弟の机を蹴り上げた。
机の中に入っていたらしい教科書をばら撒きながら、素敵な弧を描いて机が飛ぶ。
「ありえん……ありえんだろコレは!」
弟が床に落ちた机を指差す。
「別に? 何? 普通じゃない」
「普通なわけあるかあああ!」




「ナナちゃん」




冷たい声で言うと、弟はぴたりと動きを止める。そしてすかさず
「すみませんでした」
「分かればいいのよ、ナナちゃん。弱い上に頭も悪くて、その上聞き分けも悪いなんて最悪だもんね」
にこりと笑って財布を投げて返し。


「口答え分」


言うと彼女は弟を思い切り蹴飛ばし、弟は見事に床に倒れる。
「じゃ、またね」
そういうと姉は鼻歌交じりに教室を出て行った。


「な、ナカジ、生きてる?」
「当たり前だろう」
すぐに起き上がったナカジに、タローは胸をなでおろす。
「あの、さっきの人、誰」
「恐ろしいことにうちの姉だ」
「お姉ちゃんなんだ」
タローはそういうと、ナカジに首を傾げてみせる。
「ナカジは学年トップの成績で、なんで阿呆呼ばわりされてるの?」
「よくわからんが、姉も学年トップだからじゃないか? あの人のことはよくわからん。もうなんていうか、理不尽の塊のような人だよ」

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