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■メガネは嫌いだって言ってるだろうが。
メガネが嫌いだ。
自分の視界がたった二枚のレンズに支配されてしまうことに腹が立つ。
そしてそのレンズ二枚がないと何も出来ないことにも腹が立つ。
レンズが無い世界は、いつだって輪郭がぼやけて歩くことさえままならない。
自分が、あのレンズ二枚に支配されている。
こんな莫迦な話があってたまるか。
こんな気持ちが、メガネをかけないやつに分かるか?
しかもだ。
俺は結構餓鬼のころからメガネをかけているわけで、つまりはすでに俺=メガネになりつつあるわけで、こんなの個性でも何でもねえ、とか思うわけだ。
一緒くたにするな、と声を大にして叫びたい。
叫べるような性格でもないわけだが。
一度はコンタクトレンズを考えたこともある。
しかし体のほうが受け付けなかった。異物感、不快感。
誰にも会わない夏休みを使って試してみて、残ったのは敗北感だけだ。
メガネ似合うよ。
うるせえうるせえ。
大体メガネかけてない俺を知らないだろうが。
ここまで来たらメガネかけてない自分なんて絶対に家族以外に知られてたまるか、と妙な意地を張ってみたりする。
なんの得もないわけだが。
兎も角、メガネが俺を印象付けるってのが気に食わない。
メガネでひとくくりにされるのも腹立たしい。
メガネ男子なんて言葉は消えてなくなっちまえ。
視力が落ちるたびにレンズは厚みを増す。
メガネのレンズは圧縮して、ずいぶん薄いはずなのだが。
物理的に視力が落ちたことを突きつけられて、暗い気分になる。
ズレたメガネは単純に目が疲れる。
ちょっとした雨にも弱い。
視界は水滴にさえぎられ、世界はぼやける。
温度差にも弱い。
すぐに曇る。曇り止め加工は何のためにあるんだ、と小一時間問い詰めたい気分だ。
ほらな。
メガネに良いことなんて無い。
その日は登校途中に急に雨が降って、さす傘も無く濡れて教室に入った。
まだ人も疎らな教室。
ため息交じりに席に座って、うつむいてメガネをはずす。
兎も角さっさとレンズを拭かないといけない。
実はメガネってやつはやっかいで、水濡れにも弱い。放っておくとコーティングがはげる。
メガネを外すのは厄介だ。
本当に近くしか、しっかり認識できない。
滲む視界。泣いてるわけでもないのに。
外したメガネをとりあえず机において、ハンカチを取り出したところで
「貸して」
机から、メガネが取り上げられる。
反射的に顔をあげる。
ボケた視界に、見える人影。
目を細める。
ほとんど睨み付けるような顔になっているだろう。
しかめっ面。
気分と裏腹。
メガネを手にして、彼女は濡れたままのそれを自分の顔へ。
「すごい、世界がキラキラしてみえる」
「水滴のせいだ」
「ナカジくんは、いつもこんな綺麗な世界を見てるのね」
「見てない」
そんなことがいえるサユリのほうが、きっと綺麗な世界を見てる。
サユリは自分のハンカチでメガネを拭くと、俺の顔にそれをかけて戻す。
クリアになる世界。
初めて認識する世界で、笑うサユリ。
「ホントは視界が滲んで、何にも見えなかっただろ」
「うん。でも、水滴がキラキラひかって綺麗だったのは本当だよ」
不機嫌な俺の声にひるむことなく、サユリは笑ってこたえる。
「それにね」
「メガネ外すと、視界が滲んでよく見えないんでしょ? 私もメガネかけたら視界が滲んでよく見えなかった。だからね、さっきの瞬間、きっと私とナカジくんは、同じ世界を見てたんだよ」
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