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■これは妖と呼ばれるものを狩ることを趣味生業とする姉と弟の物語。
狩りつくした先に見える未来は、一体何色か。



※パラレルだと思っていただけると分かりやすいかと。




夜空には白く輝くやけに明るい満月が浮かんでいる。
頬をなでていく風は生暖かい。
少女は月を見上げてにやりと笑う。

「狩りには良い日和だと思わない? ねえ、ナナちゃん」

ナナちゃん、と呼ばれた少女の後ろに座り込んでいたマフラーの少年は答えない。
ギターを肩から提げ、ただだるそうにその場にうずくまっている。
「今日も絶賛体調不良だね、ナナちゃん」
「頭が割れそうだ……吐きそう……姉さんなんで平気なんだよ」
「嫌だなあナナちゃん。『おねいさま』でしょ」
少女はそういうと、持っていた木刀を肩に担ぐ。それから大きくため息をついて見せた。
「まあ、あたしはナナちゃんと違って、そういう『感じ方』はしないから、便利といえば便利」
そういって、かけていたメガネをはずして胸ポケットにしまう。


「ま、見えすぎて困るときはあるけどね」


少女の目は満月を背に立つ異様のものをうつす。
「あら、結構大物よ、ナナちゃん」
「……どんなの」
「10センチくらいの羽が生えた蛙みたいなのが、群れ作ってビルみたいになってこっちに来てる」
「それでこんなに羽音がうるさいのか。……不協和音だし最低だ」
「ま、さっさとやっちゃいましょう。大丈夫よナナちゃん、すぐに楽になるからね」

そういうと、少女は木刀を構える。
「遠からん者は音にも聞け、近からん者は目にも見給え、この界隈には知らぬものなし、漆黒の姫、中嶋の娘陸とて、一騎当千の娘ぞや。我と思わんものは寄り合えや、見参せん!」
「おねいさま、平家物語は縁起悪すぎ」
「良いからナナちゃん、お仕事お仕事」
言われて少年は立ち上がる。
「……中嶋の次期当主、奈那志がお相手いたす」
「ナナちゃん、相変わらずやる気なーい」
少女はそういうと軽やかにその身を前へ進める。
「ナナちゃん、あとよろしく」
「……」
少年は立ち上がると、ギターをじゃらん、と一度鳴らす。
そのとたん、少年を中心に、青白い光が世界を染めていく。
「じゃ、ナナちゃん、ノリの良いので頼むわよ」
「……ああ」

少年は一度大きく息を吐いた。
頭は相変わらずがんがんと割れるように痛い。
吐き気がする。
いつだって、妖が出るときはそう。
いつだって音だけ聞こえて、姿は見えない。
このイラツキを、彼は音に乗せる。
音はもっと、美しいものだ。
もっと、純粋であるべきだ。
こんな不協和音が許されてたまるか。
それが彼の攻撃性。
世の中への腹立たしさ。
そういうものを、全て音にして吐き出す。

別にその後すっきりするとか言うことは無い。
もやもやしたものは、もうずっと身体の内側に残り続けている。
それはずっと曇り空のように身体の中で積もり続け、
なんだかもう、身体の一部のようになってしまった。

姉の足取りを見る。
1.2.3
テンポを数える。
早すぎず、遅すぎず。
姉の速度に合わせて、
自分は世界に音を解き放つ。

ギターは今日も、良い音がする

大丈夫。

これが有る限り、

自分は



姉は



負けない。



それは爆音。
妖と、それに関するものだけが聞こえる、彼の攻撃。
姉が音楽に合わせて木刀を振り回す。
何も見えないけれど、
ただ何かが殴られる音だけは聞こえる。

それとともに、少しずつ、世界の音がクリアになる。
自分のギターの音だけが響く。
姉の足音。
木刀の空を切る音。
そういうものが渾然一体として、
多分世界は浄化されていく。

自分の中に、何かの曇りを残して。


「ナナちゃん、終わり終わり」

姉の声に目を開ける。
自分の視界に、変化は無い。
「相変わらず攻撃的な音を鳴らすよね。いいなあ」
姉は少し恍惚とした瞳で月を見上げる。
「ナナちゃん、相変わらずだねえ。なんて顔してるのよ」
そういうと、少女は弟の額をつつく。
「もっと晴れがましい顔しなさいな。中嶋次期当主」
「姉さんがなったほうがきっと向いてるよ」
「おねいさま、だよ、ナナちゃん」
そういうと、少女は容赦なく弟の脛を蹴り上げる。
「……っ」
「あ、メールきた。……おお、ナナちゃん、300入ったよ、300」
「……山分け」
「分かってるよ」
姉はふい、と頬を膨らますと、その後にやりと笑った。




■とりあえず、出だしなので。
こんなもんで。

分かる人へのジョーク
ナカジ→ハヌマーン/オルクス
姉→モルフェウス/ソラリス

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