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■久々に成立前のナカサユです。
久しぶりすぎて書き方忘れかけてました。






帰りの会の最中から降り出した雨は、いよいよ勢いを増して、委員会が終わったころには世界を白く染めるほどになっていた。
昇降口のコンクリートに、叩きつけられる大粒の雨が跳ね返り、バタバタという音を立てる。
ざあ、という雨音に、色々な音が吸い込まれていく感じ。
雨特有の湿った空気の匂い。
湿気を吸って少し重いおさげ。
 

ひとつ、ためいき。
 

バスの時間は何時だっけ。
駅まで歩く道のりは、そんなに長くはないけれど、雨にぬれて行けるほど近くはない。
最寄りのコンビニの傘は、多分もう売り切れただろう。
何せ朝から夕方まではとっても良い天気だったんだから。
天気予報は一日お天気が持つって言ってたのに。
 

「傘ないのか」
ずっと昇降口から外を見ていた私の背後から、不意に声。
「あ。中嶋君」
この前は雷。最初は涙。今日は雨。
よくよく中嶋君には水のことでご縁がある気がする。
相変わらず普段はお互い全然接点がなくて喋らないから、こんな風に話しかけられるとやっぱりちょっとびっくりする。
「傘、ないのか」
「うん、ないの。中嶋君は?」
「ある」
そう言って、カバンの中から黒い折りたたみ傘を出してきた。
「基本折りたたみはカバンに入れておくと良いぞ」
「そうだね」
「宮永は駅までか?」
「うん。バス乗ろうかと思うんだけどね、混みそうだよね。……中嶋君は自転車じゃなかったっけ?」
「そう。だから自転車は置いて帰る。……宮永が嫌でなければ、そこまで一緒に傘入っていくか? 俺は家近いから、分かれ道から走ればいい」
「中嶋君が濡れちゃうじゃない」
「宮永は濡れたら風邪ひきそうだ」
「……」
外は、世界を白く染めるほどの大雨。
中嶋君も濡れたら風邪ひくんじゃないかなあ、とは言わないでおいた。
「じゃあ、お言葉に甘えます」
雨だし、周りも仲間内で一緒に傘入って帰る人もいたし、まあ、いいや。
 


中嶋君は背が高い。
私は中嶋君の肩までくらいの背しかない。
折りたたみ傘は狭いからちょっと体をくっつけるんだけど、結局肩は少し濡れる。
相合傘なんて、経験、ないんだろうな。私は女の子同士でやるけど。
なんだか少々ほほえましい気分になってきた。
とはいえ、話すこともなく、黙々と歩く。バス停までのほんの数分。ちょっと苦痛な気もするけど、我慢我慢。
「いつも中嶋君は、やさしくしてくれるね。ありがとう」
「別に」
「でもなんで、やさしくしてくれるの? 他の子にはそうでもないよね」
ふと、気になって尋ねる。
中嶋君は、ぼそりと答えた。
 

「好きだから」
 

「え?」
「宮永が、好きだから」


何の冗談かと思った。


中嶋君は相変わらず前を向いたままで、私を見たりはしていない。
「ウソだああ」
「ウソでこういうこと言う奴だと思われてるわけだ」
淡々と。
歩くスピードは変わらない。
正面を向いたまま、雨で周りの音も聞こえないまま。
傘にあたる雨粒の、バタバタいう音だけが喧しい。
「こ、……まるよ」
無意識に、しぼり出た声は、そんな言葉だった。
「私、好きな人、居たの、知ってるでしょ?」
「知ってる」
「まだ、切り替わらないのに、困るよ」
声がちゃんと出ない。
「……悪い、忘れてくれ」
淡々と。
特に声に震えもなく。
私のほうを見ることなく。
中嶋君はあくまで会話の延長のように答える。


腹が立った。
こういうの、大事なことなのに。


「忘れていいようなことなの!? 冗談なの!? なら最初から言わないでよ!」
「……いや、何というか」
そこで中嶋君はしばらく黙った。
「冗談じゃ、ない。でも、忘れてくれ。困らせるつもりはなかった」
ぴったり三歩分時間をとってから、中嶋君は相変わらず淡々とつぶやくように言うと、私に傘を押しつけた。
「じゃあな」
それだけ言って、中嶋君は傘から白い世界へ走り出していった。



残されて、茫然とする。
バスに乗っても、電車に乗っても、家についてからも、全然釈然としない。
頭の中が、ぐるぐるする。


中嶋君。
全然予想外。


夜になるころ、ようやく落ち着いてきた。
少し、ほんの少しだけ、中嶋君に悪いことをした、と思う。
私は、自分の気持ちを、あの子に言えなかった。それだけの勇気がなかったから。
中嶋君だって、見た目こそ淡々としてたけど、きっと、勇気を振り絞ったにちがいない。
私は。
多分ひどいことをした。
言い方だって色々あったと思う。



ぐるぐる。


色々考えて、考えて、結局答えなんて出ないことは分かってるけれど。



次の日、重い気分を引きずって学校。
中嶋君は、見た目いつもどおりに見えた。



私だけがぐるぐる回ってて馬鹿みたい。




 



■ナカジ視点に続く。

普段、成立後のナカサユ書いてて「ナカジ君」と呼ぶサユリに慣れてるせいで、「中嶋君」と書くのを危うく忘れるところだった。

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