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■もしかしなくても初めましてな感じの、ナカジ視点のタロナカです。
やっぱり報われない。
 



「ナカジ好きー!」
「くっつくな鬱陶しい!」
くっついてきたタローに肘鉄を食らわすと、タローは頭を押さえて
「サユリんー、痛いようー」
泣きまねしつつサユリのところへふらふら歩いて行くと、サユリに抱きつく。
「おお、よしよし、今のはさすがに痛かったねえ。すごい音したねえ」
苦笑しながらサユリはタローの頭をなでる。
「サユリちゃんにくっつくなー!」
ニッキーがタローにチョップを繰り出すと、タローはひょいっとそれを避ける。
「サユリんー、ニッキーがひどいー」
「ひどくねえよ! お前くっつくのやめろよ!?」
おおその通りだニッキーもっと言え、と思うがそれを口にすることはなく、俺はとりあえずタローをにらみつける。
「ナカジがにらむから離れるねー」
あははー、ありがとうサユリんー、なんて言いながらタローはサユリから離れて適当に男子の輪に入って話を始めた。


連太朗は得な人間だと思う。
大柄でがっしりしている、その図体だけだときっと威圧感でここまで好かれないだろう。
いつもニコニコしていて、裏表がなく、好きなモノにひっついていくその様はまるで大型犬だ。基本があっさりしていること、そして生まれと育ちがハワイであることなどが相まって、べったりとくっついても嫌がられることはない。

曰く、「タローちゃんハグの文化で生まれ育ってるんだもんね、もうしょうがないなあ」

男女とも回数に差があるにせよ、タローに抱きつかれたことが無い人間はいないくらいだが、誰からも嫌われたり嫌がられたりしないのだ。
奇跡、と言えなくもない。
最初はびっくりしたとしても、その感情に何も裏が無く単純に「好きだ」ということの意思表示であるからそのうち慣れてくるのだ。


俺も中学の時初めて「好きだ」と言われつつ抱きつかれた時は心底驚いた上に、慣れないその状況に随分混乱して気味が悪かったが、それが大して深い意味がないとわかってからは放っておいていた。
ただ、反応しないだけだとつけあがってエスカレートするから、適当にあしらって怪我させない程度にひっぱたいたりしているだけで済ませていただけだ。
ちょっと他人よりくっつかれる回数多いな、とは思っていたが、中学の時からの慣れの問題だろうと大して気にしなかったのだ。
他の人間にくっついていくのと違いなんてないと思っていたのだ。


「ナカジ好き」
「あーもー鬱陶しい」
いつもの流れで適当にあしらおうと、タローをひっぱたこうとその顔を見て。
唐突に気づいてしまった。
タローの目の奥にある、本気の光に。
昏い炎に。


ああ、こいつが俺に言う「好き」は、他人に言っている「好き」とは違う。
これは親愛の「好き」ではない。
情愛だ。
例えて言うなら、俺がサユリに対して感じている「好き」と同じもの。
きれいごとだけでは済まない感情。


相手を大事にしたい
愛したい
愛されたい
好きにして
好きにしたい
どうにでもなれ
どうにかしてくれ
一緒に居たい
くっついていたい
抱きしめたい
抱きしめられたい
キスしたい されたい
入り込みたい

そういう、愛情も肉欲も含んだ感情。


こいつが、俺に抱いている感情。


思えば、考えないようにしていたのかもしれない。
俺にくっつく回数が他人に比べると異様に多いこと。
俺が殴ったりするのは絶対によけないこと。
軽く言う「好き」の奥にあるもの。
心のどこかで感じながらも、意識に至るまでに否定していたこと。


こいつは、俺が「好き」なのだ。
本気で。

 

「どしたのナカジ変な顔して」
「喧しい。お前に言われたらおしまいだ」
ごすっととりあえずその脳天に肘鉄を食らわせて。
「うう、痛い……ナカジは手加減って言葉を覚えたほうがいいね」
「お前以外にはちゃんとしてる」
「ひでぇ! ナカジひでぇ!」


もしかしたら、こいつのほうが、俺に深刻に取られないようにしていたのかもしれない。
こいつ、発言は大変莫迦だが、生きるのは俺とちがって賢いから。
ずっと気付かなかった俺が莫迦なのだ。
だとしても。
このまま気付かないでいたかった。
気付かないままでいたかった。

いつか。
この昏い炎に身を焼かれる日がくるんだろうか。
立ち向かわなければいけない日がくるんだろうか。

願わくば、そんな日が来ないように。


生きるのが大変下手な俺の隣に居て笑っている、変わり者で物好きな、数少ない友人を、俺は失いたくはない。
頼むから。

今まで通り、冗談で済ませておいてくれ。
俺も気づかないままでいるから。
 


■その奥にある感情は、やっぱり困惑だと思う。

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