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■本日、サユリんはそれなりに分かる世界に紛れ込みます。
分かるようだけど、やっぱり納得はいかない世界です。




ガラスのドアを開けると、そこは見慣れた昇降口だった。
が、いつもと、少し違う。
考えるまでも無く、その理由はすぐに分かる。昇降口は張り紙だらけだったのだ。
ピンク、緑、青。さまざまな色画用紙に、色とりどりのペンでさまざまなことが書いてある。
いわく
『1-D 恐怖お化け屋敷 1階大教室』
『3-B はじめちゃんも感涙 魅惑のパン屋さん 3B教室』
『相性占いやってます パソコン部 部室』


……文化祭?


季節はいつだっけ、とサユリは考える。
少なくとも、最初、アユムと教室に居たときは文化祭の季節じゃなかった。
用意もイベントもやってない。

「おー、サユリかー、どうしたそんなところで立ち止まってー」
声の方向を見ると、緑色のペンで3-Bだとかメロンパンの絵だとか書きなぐった黄色いTシャツを着た、ハジメが立っている。
半袖だけど、左腕に「巡視」なんて描いた腕章をしていた。
「先生は何してらっしゃるんですか?」
ハジメは左腕の腕章を見せて
「今は構内巡視だ。一般公開もしてるからな、なんかあってからじゃ遅い」
「なるほど」
「サユリはどうした、一人で」
「待ち合わせです」
とっさにそんなことを言う。待ち合わせも何も、今ここへ放り込まれたばかりなのだが。
「そうかそうか。楽しめよー、こういうのは、現役のときの特権だからなー」
「そういえば、先生のクラスは何をしてるんですか? 魅惑のパン屋さんとか書いてありますけど。行かなくて良いんですか?」
尋ねると、ハジメは一瞬泣きそうな顔をしてから、大きくため息をついた。
「俺はな、模擬店へ来るな、といわれたんだ。ショウコにつめたーーーーい瞳で」
「え、どうしてですか?」
「つまり、ウチのクラスは、メロンパンを売っている。メロンパン。チョコチップメロンパン。イチゴ果汁入りメロンパン。メロンパンのふりをしたシュークリーム……。俺が行くと買占めるから、文化祭にならんのだと」
「……なんか最後二つくらい、メロンパンとして大いに疑問をはさみたい感じでしたけど」
「ちなみにシュークリームも売ってるからDTOセンセも立ち入り禁止だ」
「なんか、切ないですね」
「切ないぞー。その上、『売れ残ったら買ってくださいね、全部』なんていわれてるんだぞ」
「あ、だいぶ切ないですね」
「切ないぞー!」
がー、とハジメは両腕を振り上げて叫ぶ。
そっとしておいたほうが良いかもしれない。
「そういえば先生」
「なんだ?」
「文化祭のプログラムとか、校内配置図とか、何処で手に入りますか?」
「昨日の学活で配られただろう? サユリが失くすとは珍しいな。……本部に行ったら一般用が置いてあるから、もらって来い」
「本部は何処ですか?」
「……昨日の学活で寝てたのか」
ハジメはサユリを呆れたような瞳で見た。
濡れ衣だ。
なにせ「ここ」での「昨日」は今のサユリには無いのだ。
しかし反論する余地は無い。
「正門横のテントだ、まだ余裕あるはずだ」
ハジメは左腕の時計を見る。
まだ午前中、それほどパンフレットは捌けてないだろう。
「ありがとうございます」
サユリは深々とお辞儀をすると、靴箱の間をすり抜けて正門側の扉の前まで歩く。
「そうだサユリ」
ハジメの声に振り返る。
「知り合いだからって気を抜くなよ?」
「え? どういう意味ですか?」
「祭りでみんな浮かれてていつもと違うかもしれん、ってことだ」
ハジメはひらりと手を振ると、来た方向とは逆の方向へ歩いていった。

昇降口のガラスドア越しに、文化祭で浮かれた前庭が見える。
芝生の向こうに、正門。その隣にはハジメが言ったとおりテントが張られており、それが本部なのだろう。正門にはダンボールなどを使って作ったのであろうアーチ型の門が飾られている。
芝生のところには、見覚えの無い像が建っている。
紫色で、誰かの姿をしているようだけど、こちら側は背中側でそれが誰だか思い出せない。
手には何か杖のような長いものを持っている。その杖の先が3つに分かれている。
誰か、見たことのある人だ。
でも、誰だっただろうか。

見に行けば分かるか。

サユリは深く考えずに扉を開く。



ひんやりとした空気。
何処までも光に満ちた、青い世界。


文化祭の校庭には、出られなかった。



 

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